突然だが、SENNHEISER HD650というヘッドホンをご存じだろうか?HD650は2004年に発売されてから今だに世界中の音楽関係者が愛用している名機である。そんなHD650には「HD6XX」という型番が存在する。これはアメリカのMassdropというECサイトのオリジナルモデルであり、HD650と同じドライバーを搭載しているらしい。
今回はアメリカから取り寄せたHD6XXを入手したので、HD650との違いや使用感をレビューしていきたいと思う。
Dropから購入する

Massdrop(現在はDropに改名)はユーザーが注文を共有し、集団購入を行うオンラインコミュニティとして始まったeコマースプラットフォーム。ユーザーが注文する数に伴って商品価格が変動するというユニークなECサイトだ。
ヘッドホンやイヤホンなどのオーディオ製品だけでなく、キーキャップなどのマニアックな製品も販売しており、自作キーボード界隈では割と人気なんだとか。
HD6XXはドイツの音響機器メイカーで有名なSENNHEISERとのコラボで作られたDorpオリジナルモデルである。HD6XXが購入できるのはここだけ。オリジナルモデルといってもHD650と基本設計はまるっきり同じで、より安価で購入できるというのがポイントだ。
以前は大人の事情でSENNHEISER製品はDorpから購入できなかったのだが、いつの間にか普通に買えるようになっていた。
海外通販なので購入する際は住所を英語で記載しないといけない。記載が不安な方は国際郵便マイページサービスで住所登録すると英語表記が出るので、それをコピペすれば間違いない。
値段とか、関税とか

今回筆者は本体価格199ドルに加えて、日本への送料が20ドル計219ドル(約28,000円)で購入できた。HD650が大体6万円ぐらいなので、円安の現在でも3万円以下で購入できるならかなりお買い得。ただ、海外からの取り寄せは商品に関税が掛かることを忘れてはいけない。
関税は配達員にその場で支払うのだが、今回は関税+通関料の1,600円が請求された。これも思いのほか安かった。諸々含めて実質HD650が3万円で買えてしまうことになる。
ただ、これはあくまでも一例なので、関税や商品価格は変動することを留意しておいてほしい。
届くまでにかかった日数
Dorpの商品ページ下部に発送予定日が記載されている。
筆者の場合は2月13日に注文して3月2日に発送通知、3月13日に到着。注文後ちょうど1か月でに手元に届いた。
配達業者はDHLで荷物の追跡ができるため、安心して待つことができた。
HD6XXの外観レビュー
SENNHEISER HD6xxはフラッグシップモデルのHD800シリーズに続き、ハイエンドモデルのHD600シリーズに位置する。基本的なスペックは以下の通り。
周波数特性 | 10 - 41,000Hz |
定格インピーダンス | 300Ω |
押し当て力 | 約6,0N±1,0N |
重量 | 約260g(接続ケーブルなし) |
開封

想像していたパッケージと全く違う青い箱が出てきて焦ったが、中身はちゃんとHD6XXだった。どうやら今回のロットから簡易包装に変更されたようだ。

他のHD600シリーズの本体写真のパッケージと違って、線描でヘッドホンが描かれたシンプルな外装。Dorpのロゴも入っている。これはこれでレア感があっていいと思った。

紙とビニール袋だけの簡易包装で耐衝撃性が少し不安だが、商品に破損や凹みはなかった。 以前はスポンジで梱包された高級感ある専用ケースに入っていただけにちょっと残念。 ちなみにHD650もこれと同じ簡易包装に変更されたらしい。
箱の中身

箱の中身は説明書と本体のみ。内容物も非常にシンプル。

付属のコード長は1.5メートル。HD650は3mのケーブルが付属されているので、ヘッドホンのケーブルとしては短いと感じる人もいるかもしれない。
HD600シリーズはコードが着脱式のリケーブルに対応している。ケーブルをアップグレードしたり、バランス端子のケーブルに変更することができる。

先端は3.5㎜ステレオミニプラグから6.3㎜ヘッドホン端子の変換アダプタがついている。
DH6XXのデザイン

HD6XXは開放型ヘッドホンなので、ドライバーは金属のメッシュ一枚で隔てられているだけ。メカメカしい無垢なデザインはガジェット好きなら刺さるものがあるのではないだろうか。
HD650は筐体のプラスチックに光沢のあるコーティングがされているが、HD6XXはプラスチックの質感が強い。また、商品ページの画像を見ると紺色の筐体だが、実物はほぼブラックにみえる。
イヤーパットはベロア生地のような肌触りで、思いのほか柔らかい。通気性は良く蒸れにくいので装着感はかなり良い。 ただ、合皮やビニールのような水をはじく素材ではないので、汗を吸って劣化が早そうなのは懸念点ではある。 イヤーパットはHD600シリーズで共通の交換パーツが販売されており、簡単に交換できるようになっている。

ヘッドパットは二つの山がある。表面はスベスベした生地で、柔らかめのスポンジが包まれている。頭に接する面積が少ないので、長時間装着しても疲れにくいデザインになっている。
HD6XXの音質
ヘッドホン史上最高傑作と名高いHD650とほとんど変わらない構成なので、音質にもかなり期待ができる。ほかのHD600シリーズも視聴してきたため、それらと比較してHD6XXの音質を主観でレビューしていく。筆者は高級イヤホンには何度か手を出しているが、ハイエンドヘッドホンの購入は今回が初なので参考程度に聞いてほしい。
第一印象は音のキレがすごい。高温の煌びやかさであったり、ボーカルの解像度が圧倒的。サ行の刺さりもほとんど気にならない点もかなり気に入った。また、空間表現も素晴らしく、音の方向性が極めて明瞭。ライブ音源では現地さながらの音に包み込まれる体験ができる。音楽MIXなどを手掛ける人なんかにもお勧めできるほど音の分離が良い。
ただ、欠点がないかといえばそうでもない。開放型ヘッドホンにしては低音のこもりが目立つように感じた。これはHD650にもよく言われていた現象で、エージングで改善できるとのこと。
エージングとは音源を長時間流すことで音質向上を図るという手法。実際に筆者も100時間ほどホワイトノイズでエージングしてみたが、確かに多少低音がクリアになった気がする。いずれにしても、 3万円台のヘッドホンとは思えない音質であることは間違いないだろう。
注意点としてはインピーダンスが300Ωと高いため、ある程度のヘッドホンアンプが必要になる。スマホでも音量MAXにすれば一応聴くことはできるが、本領発揮させるためにやはりアンプが欲しい。
他のHD600シリーズも視聴してきたが、音の系統や音質は大きく変わらないと感じた。特にHD650とHD6XXはブラインドで聴き分けられる自信がない。最近発売したHD660S2は低音の解像度が高く進化を感じられたが、HD6XXとの差額が6万円以上と思うと購入に躊躇してしまうレベル。
ヘッドホン名 | SENNHEISER公表価格 |
HD600 | 44,000円 |
HD6XX | 31,200円(1ドル135円換算) |
HD650 | 71,500円 |
HD660S | 60,500円 |
HD660S2 | 96,800円 |
HD6XXの使用感

ヘッドホンを選ぶ上で音質と同じぐらい重要なのが装着感である。HD6XXは箱出し状態では側圧が強くて1時間ほどでこめかみ辺りや顎が痛くなった。SENNHEISERのヘッドホン全般が側圧強めの仕様になっているため、自分の頭の形にフィットするようになるまで最初は我慢が必要。

長さ調整はカチカチするタイプで無段階調整ではないものの、細かく調整できるので必要十分だと思う。かなり引き伸ばせるので、頭の大きい人も装着できると思う。
ヒンジ部分の可動域はかなり狭め。しかし装着していて気になることはなかったので、あまり気にしなくていいと思う。

HD6XXは開放型ヘッドホンなので、ドライバーを隔てるものは金属のメッシュ一枚のみ。スピーカー並みに音がダダ漏れになるため、基本的に外で使うことはできない。使用状況が限られることは開放型ヘッドホンの最大の欠点だろう。
総評

輸入の手間はあるが、この音質が3万円で手に入るのは普通に価格破壊だと思う。知る人ぞ知る不朽の名機を安価に入手できてかなり満足度の高い買い物ができた。
海外通販に抵抗がなければ強くおすすめできるヘッドホンなので、ちょっといいヘッドホンを購入する際は候補に入れてみてはどうだろうか。